ヘルメット、グローブ、ジャケット、ブーツ。ここまでバイクに乗るためのギアを揃えてきたが、今回は少し視点を変えて「バイクを降りたあとの時間」に目を向けたい。
レザーウォレットだ。
ハーレー乗りと革財布の相性がいいのは、バイクカスタムと通底する感覚があるからだと思っている。革を使い込むほどに色が深まり、自分だけのテクスチャーになっていく。その経年変化——エイジングを楽しむ文化が、マフラーを換え、シートを張り替え、自分だけの一台を作り上げていくプロセスとよく似ている。
とはいえ、財布はバイクの上だけで使うものじゃない。仕事の打ち合わせでも、週末のカフェでも、財布は毎日出番がある。だから今回は「バイクにも日常にも合う」という基準で5つ選んだ。バイカーズウォレットの王道からハイブランドまで振り幅を持たせたので、自分のスタイルに合うものを見つけてほしい。
レザーウォレットの選び方
① 長財布か、二つ折りか、コンパクトか
形は大きく3タイプある。それぞれ、ライディング中の収納場所によって使い勝手が変わる。
長財布はジャケットの内ポケットに入れるか、ウォレットチェーンで腰から提げるスタイルが定番。存在感があり、革の面積が大きいぶんエイジングも映える。ただし、バイクを降りてポケットに入れると嵩張る。
二つ折りはデニムの後ろポケットに収まるサイズ感で、ライディング中はジャケットの内ポケットにも入る。バランスが良く、日常との兼用がしやすい。
コンパクト(三つ折り・ミニウォレット)はキャッシュレス派向け。カードと少しの現金だけ持ち歩くなら、これで十分だ。ボディバッグやタンクバッグに入れても嵩張らないのはメリットだが、革の面積が小さいぶんエイジングの表情は控えめになる。
② 革の種類とエイジング
レザーウォレットの魅力は、使い込むことで自分だけの一点モノになること。ただし革の種類によってエイジングの出方はかなり違う。
サドルレザー(ヌメ革)はエイジングの王道。新品時はベージュに近い明るい色だが、使い込むと飴色に深く変化していく。この変化を楽しみたいならサドルレザーを選ぶべきだ。ただし水濡れに弱く、使い始めにシミができやすい。
栃木レザーは日本の「栃木レザー社」がフルベジタブルタンニンなめしで作る国産最高峰の革。しっとりとした質感で、サドルレザーと同じくエイジングが楽しめる。国内の財布メーカーが多く採用しており、品質の安定感がある。ブーツ記事で紹介したSlow Wear Lionも、別モデルで栃木レザーを使っている。
クラシックカーフ(クロムなめし)は最初から柔らかく手に馴染み、水にも比較的強い。エイジングの変化はタンニンなめし系ほどドラマチックではないが、光沢が増して上品に深まる。ハイブランドの財布に多い仕上げだ。
③ ウォレットチェーンは付けるか問題
バイク乗車中にウォレットチェーンで腰から財布を提げるスタイルは、落下防止として実用的だ。特に高速走行中にジャケットのポケットから財布が飛んでいく事故は実際にあるので、保険としての意味もある。
ただし日常使いでは好みが分かれる。仕事の場ではチェーンを外したいという人も多いだろう。だから選ぶなら、チェーン用のDカンが付いていても普段は外して使えるモデルが汎用性が高い。あるいは最初からDカンが付いていないモデルを選んで、必要なときだけ後付けのウォレットチェーンを使うのも手だ。
おすすめレザーウォレット5選
1. REDMOON ロングウォレット(サドルレザー)
タイプ: 長財布
素材: サドルレザー(牛革・タンニンなめし)
価格帯: 30,000〜50,000円(モデルにより変動)
バイカーズウォレットと聞いて多くの人が思い浮かべるのがREDMOONだと思う。1993年に後藤惠一郎が立ち上げた日本のレザーブランドで、「バイカーズウォレット」というカテゴリを日本に定着させた存在だ。
サドルレザーのロングウォレットは、新品時の硬さと素朴な表情から、使い込むことで飴色に深く変化していく。その過程がREDMOONの最大の魅力だと思っている。3年、5年と使い続けた個体は、もはや別の財布と言っていいくらい表情が変わる。
コンチョ(金属製の飾りボタン)やウォレットチェーンとの組み合わせでカスタムできるのも、バイクのカスタム文化と通じる部分。日本製で、職人がハンドメイドで仕上げている点も所有欲を満たしてくれる。
ハーレーの世界観にどっぷり浸かりたい人の最初の一本として、最も自信を持って勧められる。
2. DEGNER 花山ウォレット
タイプ: 長財布
素材: 牛革 × 京都の和生地
価格帯: 15,000〜25,000円
デグナーはグローブ記事でも紹介したバイク用品メーカーだが、実はレザーウォレットのラインナップも充実している。中でも「花山」シリーズは、京都の和生地を牛革と組み合わせた独自のデザインが面白い。
「和柄とバイカーズウォレット?」と思うかもしれないが、ハーレーに和のテイストを組み合わせるスタイルは意外と根強い人気がある。和柄のバンダナやスカジャンをバイクファッションに取り入れる文化の延長線上にある。
価格帯が1.5〜2.5万円とレザーウォレットとしてはかなり手が出しやすく、バイク用品メーカーならではの実用的な設計(カード収納の多さ、チェーン用Dカン標準装備)も安心できる。個性を出したい人向けの一本。
3. 栃木レザー トラッカーウォレット
タイプ: 三つ折りコンパクト
素材: 栃木レザー(牛革・フルベジタブルタンニンなめし)
価格帯: 15,000〜25,000円
トラッカーウォレットは、もともとアメリカのトラック運転手が後ろポケットに入れて使っていた三つ折りの財布。バイカーズウォレットの原型とも言える形で、コンチョで留めるシンプルな構造がクラシックな雰囲気を出してくれる。
ここではブランドを限定せず「栃木レザーのトラッカーウォレット」としておすすめする。MUDMONKEYやDAYSART、S’FACTORYなど複数のメーカーが栃木レザーで作っており、価格帯も1.5〜2.5万円と手が出しやすい。
栃木レザーの良さは、使い始めてから数ヶ月で目に見えてエイジングが出てくること。最初はナチュラルな明るい色を選んでおくと、半年後には手の油分や日光で飴色に変わり、「自分が育てた革」になっていく。エイジング入門としてこれ以上の選択肢はないと思う。
4. GANZO コードバン 小銭入れ付き二つ折り財布
タイプ: 二つ折り
素材: コードバン(馬革)× ヌメ革(内装)
価格帯: 40,000〜71,500円
GANZOは2001年に立ち上げられた日本のレザーブランドで、「時を重ねるほどに、その人だけのものになる」をコンセプトにしている。百貨店での取り扱いも多く、革小物の品質では国内トップクラスの評価を受けている。
コードバンは馬の臀部から取れる希少な革で、「革のダイヤモンド」とも呼ばれる。キメの細かい表面と、使い込むほどに深まるツヤが最大の魅力だ。牛革とは明らかに違う、独特のしっとりとした光沢がある。
このモデルは外装にオイル仕上げのコードバン、内装にヌメ革を使った組み合わせ。コードバンの光沢を楽しみながら、内装のヌメ革はエイジングで飴色に変化していく。一つの財布で二種類のエイジングを味わえるのが面白い。
「バイカーズウォレットのゴツさは日常使いしにくい」と感じている人に推したい。GANZOの財布は、デニム+ブーツの日にもスーツの日にも違和感なく使える。革の質に対する妥協のなさは、バイクのカスタムに本気で向き合う人間の感覚と合うはずだ。
5. LOEWE パズル バイフォールド ウォレット
タイプ: 二つ折り
素材: クラシックカーフ
価格帯: 70,000〜99,500円
最後にあえてハイブランドを入れた。LOEWEはスペインで1846年に革職人の工房として始まったブランドで、ラグジュアリーブランドの中でも「革の質で選ぶならLOEWE」と言われる存在だ。
パズル バイフォールドは、幾何学的に裁断した革パネルを継ぎ合わせたデザインが特徴。この「異なる革を組み合わせて一つの形を作る」というクラフトマンシップは、バイクのカスタムペイントやパーツの組み合わせに通じるものがあると思っている。
バイカーズウォレットのハードな世界観とは正反対だが、革に対する敬意は同じだ。使い込むほどにカーフレザーの光沢が深まり、パネルの境界線が手の動きに沿って柔らかく馴染んでいく。
「ハーレーに乗るけど、持ち物はハードに寄せすぎたくない」という人に。30代後半〜50代のオーナーが、仕事の場でも週末のツーリングでも違和感なく使える一本だ。バイカーがあえてLOEWEを選ぶ、その外し方にこそスタイルが出る。
タイプ別・早見表
| 好み・スタイル | おすすめウォレット | 価格帯 |
|---|---|---|
| バイカーズウォレットの王道 | REDMOON ロングウォレット | 30,000〜50,000円 |
| 個性と和のテイスト | DEGNER 花山ウォレット | 15,000〜25,000円 |
| エイジング入門・クラシック | 栃木レザー トラッカーウォレット | 15,000〜25,000円 |
| 上質な日本製・万能型 | GANZO コードバン 二つ折り | 40,000〜71,500円 |
| ハイブランドの革工芸 | LOEWE パズル バイフォールド | 70,000〜99,500円 |
革のエイジングを楽しむために
レザーウォレットを手に入れたら、ぜひ知っておいてほしいことがある。
エイジングが一番美しく出るのはタンニンなめしの革(サドルレザー、栃木レザーなど)だ。使い始めの半年がもっとも変化が大きく、手の油分や紫外線で革が飴色に深まっていく。この期間にたくさん触れて使い込むのが、良いエイジングのコツだ。
逆にやってはいけないのは、防水スプレーを最初から全面にかけること。防水スプレーは革の表面を覆うので、エイジングの進行を妨げてしまう場合がある。雨の日だけ使うか、スプレーなしで雨は避ける、くらいの使い分けでいい。
革の手入れは年に1〜2回、専用のレザークリームを薄く塗るだけで十分。やりすぎると革がふやけてしまうので、控えめが正解だ。バイクのメンテナンスと同じで、「やりすぎず、放置せず」がちょうどいい。
ローライダーSとブレイクアウト、それぞれのスタイルに
今回は「似合う」ではなく、ライディングスタイルとの相性で分けてみる。
ローライダーSに乗っているなら
ローライダーSはミニマルでストイックなスタイルが映えるバイクだ。荷物は最小限、シルエットはタイト。そのスタイルに合わせるなら、財布もコンパクトにまとめたい。
GANZOのコードバン二つ折りの黒か、LOEWEのパズル バイフォールド。どちらも二つ折りでジャケットの内ポケットに収まる。全身をダークに統一するスタイリングの中で、財布を出したときにさりげなく上質さが見える。そういう効かせ方が、ローライダーSのオーナーらしいと思う。
ブレイクアウトに乗っているなら
ブレイクアウトはクラシックアメリカンの華やかさを持つバイクだ。ロングフォーク、クローム、堂々としたシルエット。この世界観に浸るなら、財布もアメリカンスタイルで行きたい。
REDMOON ロングウォレット+ウォレットチェーンが最も絵になる。デニムの後ろポケットから革の長財布が覗き、チェーンがベルトループにかかっている。あのスタイルはブレイクアウトの持つ古き良きアメリカの空気と完璧に合う。
まとめ
財布はバイクのギアではないけれど、バイクに乗る自分のスタイルの延長線上にある。革を使い込み、自分だけのテクスチャーを育てていく楽しさは、バイクのカスタムと根っこが同じだ。
迷っている人には、まず栃木レザーのトラッカーウォレットを勧める。1.5〜2.5万円でエイジングの楽しさを体感できるし、コンチョの付いたクラシックなスタイルはハーレー乗りの日常にすっと馴染む。
そこから先は好みの問題だ。バイカーの王道を行くならREDMOON、上質な日本製で大人の持ち物にしたいならGANZO、あえての外しでスタイルを見せるならLOEWE。どれを選んでも、いい革の財布は長く付き合える相棒になる。
ヘルメットからブーツまで、そして今回の財布。バイクに乗る時間も、降りたあとの時間も、自分のスタイルでいられるように。それがIRON RIDE TOKYOの提案だ。


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