ローライダーSとブレイクアウトの違い|同じ117でも乗り味が正反対になる理由【2026年モデル】

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ローライダーSとブレイクアウト。どちらも2026年モデルのクルーザーで、エンジンは同じミルウォーキー8(M8)117。排気量1,923cc、圧縮比10.3まで同じで、車両重量の差はわずか5kgしかない。

それなのに、この2台は正反対のバイクだと言っていい。ローライダーSは、倒して曲げ、回して楽しむ。ブレイクアウトは、低く構えて、太いトルクで真っすぐに押し出す。

違いを生んでいるのは、エンジンの味付けと車体の寸法だ。ハーレーは117を3つの味付けで作り分けていて、ローライダーSには「ハイアウトプット」、ブレイクアウトには「カスタム」を載せている。エンジンの名前が、そのままバイクの性格を表しているわけだ。

先に断っておくと、この記事は試乗記ではない。2026年モデルの公式仕様の数値と、国内外の試乗記を材料に、なぜ乗り味がこれほど違うのかを読み解いていく。


なぜこの2車種を比べるのか

117の3つの味付けと、それぞれを積む2車種

117の3つの味付けと、それぞれを積む2車種

2026年のハーレーのクルーザーは6車種。すべてが117を積み、ハーレーはその違いを「吸気と排気、カムプロファイル、ライドモードのプログラミング」の3つの味付けとして作り分けている。ラインナップ全体を「ノスタルジックからハイパフォーマンス、大胆なカスタムまで」と表現していて、味付けの名前がそのまま性格の違いになっている。

  • 117 クラシック: ストリートボブ、ヘリテージクラシック
  • 117 カスタム: ファットボーイ、ブレイクアウト
  • 117 ハイアウトプット: ローライダーS、ローライダーST

このうちブレイクアウトは、カスタムの味付けを積む2台のなかで、チョッパースタイルに振り切った1台だ。ローライダーSは、ハイアウトプットを積む2台のうち、フレームマウントのフェアリングもサドルバッグも持たない、素のほうだ。つまりこの2台は、ハーレーのクルーザーの「走り」と「見た目」という両極を、いちばん純粋な形で体現している。

日本での扱いも対照的だ。2026年2月の国内発表では、ローライダーSは「ファクトリーカスタムクルーザー」、ブレイクアウトは「モダンチョッパー」と紹介された。さらにハーレーダビッドソン ジャパンは2026年8月、ブレイクアウトを「日本国内で現在販売するハーレークルーザーの中で最も人気の高い」モデルと位置づけている。

公式サイトのキャッチコピーも、性格の違いをよく表している。ローライダーSは「コーナリングは大胆に、直線は颯爽と」。ブレイクアウトは「謙虚なスタイルは似合わない。」だ。

価格はローライダーSが3,055,800円〜、ブレイクアウトが3,451,800円〜。差は39万6千円で、実際に買うときに並べて迷いやすい2台でもある。


スペック比較表

項目ローライダーSブレイクアウト
エンジンM8 117 ハイアウトプットM8 117 カスタム
排気量・圧縮比1,923cc・10.31,923cc・10.3
最高出力114HP(85kW)/5,020rpm103HP(77kW)/5,020rpm
最大トルク173Nm/4,000rpm168Nm/3,000rpm
エキゾースト2-1(触媒はヘッダー側)2-2(触媒はマフラー側)
レイク角28°34°
トレール145mm145mm
ホイールベース1,615mm1,695mm
前輪110/90B19130/60B21
後輪180/70B16240/40R18
フロントフォーク43mm 倒立49mm 正立
リアのストローク56mm43mm
バンク角31.3°26.8°
シート高715mm665mm
最低地上高145mm115mm
全幅890mm940mm
車両重量304kg309kg
価格(税込)3,055,800円〜3,451,800円〜

数値はハーレーダビッドソン ジャパンの2026年モデルの公式仕様。


エンジン:同じ1,923ccで、何が違うのか

まず、同じ部分から。ボア103.5mm×ストローク114.3mmの1,923cc、圧縮比10.3、燃料供給の方式まで、2台の117は共通だ。

違うのは、空気の吸い方と吐き方、そしてカムだ。ハーレーの公式リリースによると、2台の味付けはこう作り分けられている。

  • 117 ハイアウトプット(ローライダーS): M8 121のために開発されたSE8-511カム、前向きにむき出しのエアフィルター「ヘビーブリーザー」、2-1のエキゾースト。レッドラインは5,900rpm
  • 117 カスタム(ブレイクアウト): ツーリングモデル系の4.0Lエアボックス、触媒をマフラーごとに持つ2-2のエキゾースト。レッドラインは5,600rpm
トルクの山は1,000rpm、レッドラインは300rpm違う

トルクの山は1,000rpm、レッドラインは300rpm違う

この違いが、数字にそのまま出ている。最高出力はローライダーSが11HP上回るが、注目したいのはトルクの山の位置だ。ブレイクアウトは3,000rpmで最大トルクの168Nmに達する。ローライダーSは4,000rpmまで回して173Nmに達し、そこからさらに5,900rpmまで回る。

ブレイクアウトは、日常でいちばん使う回転域に力の山を置いている。ローライダーSは、そこからもう一段回したところに山を置き、回すほど伸びるように作られている。

試乗記の評価も、この数字どおりだ。2025年モデルのブレイクアウトを試乗したバージンハーレーは、スポーツモードでは「わずか2000~3000回転程度でも牙をむき」と書いている。2026年モデルのローライダーSについては、同じくバージンハーレーが「のけぞるほどの加速感」と表現し、カナダのDouble Clutchは、低回転の力強さを保ったまま高回転でも息切れしないと評している。

M8そのものの仕組みや、107・114・117の違いは別の記事で詳しく書いている。

→ ミルウォーキー8(M8)とは何か
→ M8の107・114・117の違い|ローライダーS・ブレイクアウトなど年式別に整理


エキゾースト:2-1と2-2

エキゾーストも、味付けの一部として作り分けられている。

ローライダーSは2-1。前後のシリンダーから出た2本のパイプを1本にまとめる形で、触媒はヘッダー側にある。吸気のヘビーブリーザー、SE8-511カムとセットで、ハイアウトプットの性能を作る部品のひとつだ。

ブレイクアウトは2-2。2本のマフラーを上下にずらして並べたスタッガード配置で、触媒はマフラーごとに1つずつ持っている。2025年の公式リリースではクローム仕上げとされていて、車体の右側に2本のマフラーが並ぶ姿は、ブレイクアウトのロング&ローなシルエットの一部になっている。

1本にまとめて性能を取りにいくか、2本並べて見せるか。エキゾーストひとつにも、2台の性格の違いが出ている。


レイク角とホイールベース:28°と34°、それでもトレールは同じ

レイク角は6°違うのに、トレールは同じ145mm

レイク角は6°違うのに、トレールは同じ145mm

この比較でいちばん面白いのが、ここだ。

レイク角(ステアリングヘッドの角度)は、ローライダーSが28°、ブレイクアウトが34°。ブレイクアウトのフロントまわりは6°寝ている。ホイールベースもブレイクアウトが80mm長い。

ところが、トレールは2台とも145mmで同じだ。トレールは、ステアリングの軸を地面まで延ばした点と、前輪の接地点との距離のこと。ハンドルをまっすぐに戻そうとする性質に関わる数字で、ここは2台でそろっている。

つまり乗り味の違いは、トレールではなく、ステアリングヘッドの角度とホイールベース、そして次に書くタイヤから生まれている。

一般に、レイク角が寝ているほど、またホイールベースが長いほど、直進安定性は高くなり、そのぶん向きを変える動きはゆったりになる。小回りも利きにくい。ブレイクアウトの試乗記でwebCGが挙げた「低重心と長いホイールベース、寝かされたキャスター」は、まさにこの組み合わせだ。

反対にローライダーSは、立ったレイク角と短いホイールベースで、向きを変える動きが速い。バージンハーレーは2026年モデルの試乗で、19インチと16インチのホイールながら「想像以上にすいすいと向きを変えてくれる」と書いている。


タイヤ:リム径は違っても、外径はほぼ同じ

リム径は2インチ違っても、タイヤの外径はほぼ同じ

リム径は2インチ違っても、タイヤの外径はほぼ同じ

ホイールの大きさは、ローライダーSが前19インチ・後ろ16インチ、ブレイクアウトが前21インチ・後ろ18インチ。前後とも2インチずつ大きい。

ところが、タイヤまで含めた外径をサイズ表記から計算すると、差はほとんどない。前輪はローライダーSが約681mm、ブレイクアウトが約689mm。後輪は約658mmと約649mmで、むしろブレイクアウトのほうがわずかに小さい。

違うのはタイヤの厚みだ。ブレイクアウトは大きなリムに薄いタイヤを組み合わせていて、タイヤの厚み(サイドウォールの高さ)は前が約78mm、後ろが約96mm。ローライダーSは前が約99mm、後ろが約126mmある。ブレイクアウトの「大径ホイール」の迫力は、外径ではなく、リムの大きさとタイヤの薄さで生まれている見た目の効果だ。

もうひとつの違いが幅だ。前輪はローライダーSの110mmに対してブレイクアウトは130mm、後輪は180mmに対して240mm。後輪は60mmも太い。ブレイクアウトの後輪は、サイズ表記の「R」が示すとおりラジアル構造でもある。

一般に、後輪が太いほど倒し込みにははっきりした入力が要り、寝かせた姿勢を保つにも力が要る。タイヤが薄いほど、路面からの入力は伝わりやすくなる。バージンハーレーは2025年モデルのブレイクアウトについて、足まわりの改良で手応えはかなりニュートラルになったとしつつ、「フロント超大径タイヤ、リア極太ファットタイヤの癖」は残ると書いている。

タイヤの銘柄は、ローライダーSがミシュランのScorcher 31、ブレイクアウトがScorcher 11だ。


足まわりとポジション

サスペンションとバンク角

フロントフォークは、ローライダーSが43mmの倒立、ブレイクアウトが49mmの正立。リアのストロークは、ローライダーSの56mmに対してブレイクアウトは43mmと短い。

ローライダーSは背の高いリアショックで車体の後ろを持ち上げ、バンク角を稼いでいる(2025年の公式リリースより)。その結果がバンク角31.3°で、ブレイクアウトの26.8°より4.5°深く寝かせられる。最低地上高も145mmと115mmで、30mmの差がある。

シート高と足つき

シート高はローライダーSが715mm、ブレイクアウトが665mm。数字だけ見ればブレイクアウトのほうが50mm低い。ただしブレイクアウトは全幅が50mm広く、ステップの位置も前にある。足つきの感覚は数字だけでは決まらないので、一度はまたがって確かめたい。

ステップとハンドル

ポジションの違いは、見た目以上に大きい。

ローライダーSはミッドコントロール。1インチのモトハンドルを4インチのプルバックライザーに載せ、上体は起きたまま、足は体の真下に来る。バージンハーレーは「手元と腰の位置関係が絶妙で、車体と一体になったまま思い通りにラインをトレースできる」と評している。

ブレイクアウトはフォワードコントロール。高いプルバックライザーにステンレスのドラッグバーを組み合わせ、足は前に投げ出す。バージンハーレーはこれを「両手両足を前に投げ出す恰好」と書き、webCGは街乗りでも「ドラッグマシンを操っているような気分」になると表現している。

ミッドコントロールはステップに体重をかけて曲がりやすく、フォワードコントロールは足を伸ばしてゆったり構えやすい。ポジションの違いが、そのまま走り方の違いになる。


乗り味の違いは、こうして生まれる

ここまでの違いを、乗り味に結びつけて整理するとこうなる。

ローライダーS:倒して曲げ、回して楽しむ。立ったレイク角と短いホイールベースで向きを変えるのが速く、深いバンク角とミッドステップで、体重を使って積極的に曲げていける。エンジンは4,000rpmにトルクの山があり、5,900rpmまで回る。2026年モデルの試乗記でも、ニュージーランドのAutoTraderは攻めて走ってもステップを擦ることはなかったと書き、Double Clutchは振り回されるのを好み、むしろそれを促してくるバイクだと評している。その代わり足まわりは硬めだ。

ブレイクアウト:低く構えて、真っすぐに押し出す。寝たレイク角と長いホイールベースで直進は安定し、旋回はゆったりしている。太い後輪と浅めのバンク角で、コーナーは倒し込むタイミングとライン取りで曲がるバイクだ。webCGは「浅いバンク角でも倒し込むタイミングや倒し込む速さ、ライン取りが的確であれば、気持ちよく曲がることができる」と書いている。エンジンは3,000rpmで山を迎えるので、低い回転から強烈に押し出してくれる。

車両重量はほぼ同じだから、この違いは重さではなく、寸法と部品の選び方から生まれている。同じエンジンで、ほぼ同じ重さでも、ここまで性格が変わる。そこがこの2台を比べるいちばんの面白さだ。


どっちを選ぶか

ローライダーSブレイクアウト
楽しみ方峠や街中で、倒して曲げる真っすぐな道で、トルクと姿勢を味わう
エンジン回すほど伸びる低い回転から押し出す
取り回しホイールベースが短く、小回りしやすい車体が長く、Uターンは大回り
寝かせられる角度バンク角31.3°バンク角26.8°
シート高715mm665mm
見た目ミニカウルとミッドステップのスポーツ顔21インチと240の、ロング&ロー
価格3,055,800円〜3,451,800円〜

ローライダーSが向いている人:ワインディングを走るのが好きな人、エンジンを回して楽しみたい人、街中での小回りを重視する人。

ブレイクアウトが向いている人:買ったその日からカスタムされた見た目を手に入れたい人、低い回転からのトルクで流すのが好きな人、真っすぐな道を長く走る人。

どちらを選んでも、117の力に不足はない。決め手は、どんな道をどんな姿勢で走りたいか、だ。


ほかの4車種も視野に入れるなら

この2台で迷っているなら、同じ味付けを積む兄弟車も候補になる。

ローライダーST(117 ハイアウトプット):ローライダーSと同じエンジン、同じジオメトリー(レイク角28°、トレール145mm、ホイールベース1,615mm)に、フレームマウントのフェアリングと鍵付きのサドルバッグを加えたモデル。ローライダーSの走りで、遠くまで行きたい人向けだ。

ファットボーイ(117 カスタム):ブレイクアウトと同じ117 カスタムを積むもう1台。エンジンの性格は同じまま、見た目の方向性が違う。

ストリートボブ、ヘリテージクラシック(117 クラシック):丸型エアクリーナーに2-1のエキゾースト、レッドラインは5,600rpm。117 クラシックを積む2台だ。


よくある質問

Q. 足つきがいいのはどっち?
A. シート高はブレイクアウトが665mmで、ローライダーSの715mmより低い。ただしブレイクアウトは全幅が50mm広く、ステップも前にあるので、実際の足つきはまたがって確かめてほしい。

Q. 高速道路を長く走るなら?
A. 直進安定性では、寝たレイク角と長いホイールベースを持つブレイクアウトが有利だ。風よけはローライダーSに小ぶりのフェアリングが付く。長距離が中心なら、フェアリングとサドルバッグを持つローライダーSTも検討したい。

Q. カスタムのベースにするなら?
A. ブレイクアウトは、最初からカスタムされた見た目が売りのモデルだ。ハーレーダビッドソン ジャパンも2026年に、ブレイクアウトのカスタムの楽しさを共有する「#MyBREAKOUTプロジェクト」を展開している。走りの方向に手を入れていきたいなら、ローライダーSが素材になる。

Q. クラッチは重い?
A. 国内外の試乗記では、ローライダーS、ブレイクアウトのどちらについても、クラッチの重さが指摘されている。渋滞の多い街乗りが中心なら、試乗で確かめておきたい。

Q. 2025年モデルとの違いは?
A. ローライダーSは、2026年モデルも基本構成は2025年モデルから引き継いでいる。ブレイクアウトも、117 カスタムや丸型ヘッドランプなど、2025年モデルで刷新された構成を引き継いでいて、2026年モデルの仕様表も2025年の公式リリースと同じ構成になっている。

Q. 114を積んでいた頃のブレイクアウトとは何が違う?
A. 年式ごとのエンジンの違いは、M8の107・114・117の違いを整理した記事で詳しく書いている。

→ M8の107・114・117の違い|ローライダーS・ブレイクアウトなど年式別に整理


まとめ

ローライダーSとブレイクアウトは、同じ117、同じ重さでありながら、正反対の乗り味を持つ2台だ。

ローライダーSは、立ったレイク角と短いホイールベース、深いバンク角、ミッドステップ、そして高回転まで伸びる117 ハイアウトプットで、倒して曲げ、回して楽しむ。

ブレイクアウトは、寝たレイク角と長いホイールベース、21インチと240の足まわり、フォワードステップ、そして3,000rpmで山を迎える117 カスタムで、低く構えて真っすぐに押し出す。

レイク角が6°違ってもトレールは同じで、ホイールが2インチ大きくても外径はほぼ同じ。数字を追っていくと、ハーレーがどこで性格を作り分けているのかが見えてくる。

どちらを選ぶかが決まったら、次はギアだ。

→ ブレイクアウトにも似合う、M8オーナーのヘルメット選び
→ ハーレーに似合うエンジニアブーツ|チョッパーからブレイクアウトまで


参考資料


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