タンク、ハンドル、エンジン。このシルエットの真ん中に、何を置くか
ハーレーにナビを付けるなら、いちばん手っ取り早いのはスマホホルダーだ。ハンドルにホルダーを付けて、Googleマップを表示すればいい。自分も最初はそうしていた。
でも、使ううちに違和感が積み重なっていった。ナビは要る。知らない土地へツーリングに行くなら、なおさら要る。ただ、ハンドルの真ん中にスマホを置くと、見慣れたハンドル周りの景色ががらりと変わってしまう。それに、走っている最中に地図そのものを眺める必要は、実はほとんどない。
いまはスマホをハンドルから外して、2024年7月からBeeline Moto II(ビーライン モト2)という直径53mmの小さなナビを使っている。この記事は製品レビューというより、なぜこれを選んだのかという、オーナーとしての理由の話だ。
先に結論を書いておく。
ナビを見るために走っているわけではない。
なぜスマホナビをやめたのか
ハンドルの中心に、6インチの板が乗る
ハーレーの魅力は、タンク、ハンドル、メーター、エンジンまで含めたシルエットにあると思っている。とくにハンドル周りは、乗っているあいだずっと目に入る場所だ。
そこに6インチ級のスマートフォンとホルダーを載せると、見た目の存在感はかなり大きい。黒い板がハンドルの中央に立ち、しかも常に光っている。停めて眺めたときも、跨ったときも、真っ先に目に入るのがバイクではなくスマホになってしまう。
情報が多すぎて、画面を「読み」に行ってしまう
使っていていちばん困ったのはこれだ。スマホの地図は情報量が多く、文字が小さい。交差点が近づくと、どこで曲がるのかを確かめるために画面に集中しないといけない。強い日差しの下では画面そのものが見にくいし、タッチ対応のグローブをしていても、画面の要素が細かくて操作しづらかった。
ライディング中の視線は本来、道路を見て、ミラーを見て、標識を見て、周りの車を見る、という順番で回っているべきだ。そこに情報量の多い画面が割り込むと、この流れが崩れる。道路交通法も、走行中に車両へ取り付けた画像表示用装置の画像を注視することを禁じている(第71条第5号の5)。
ハーレーの振動と、スマホのカメラ
あまり知られていない理由もある。Appleは公式サポートで、オートバイの高出力エンジンなどの振動を受け続けると、iPhoneのカメラ(手ぶれ補正やオートフォーカス)の性能に影響することがあると注意を呼びかけている。
ミルウォーキー8(M8)のソフテイルは、エンジンをフレームにリジッドマウントしている。振動はバランサーで打ち消しつつ、鼓動として残す設計だ。その鼓動こそハーレーに乗る理由のひとつなのだから、精密機器であるスマホをそこに直接載せないほうが気が楽だ。
→ ソフテイルとツーリングの振動対策の違いは、M8の107・114・117の違いを解説した記事で
純正メーターには、ナビがない
かといって、ナビなしで走るのも現実的ではない。現行のローライダーSやブレイクアウトも、ハーレー公式の仕様を見る限り、メーターは4インチのアナログスピードメーターとデジタル表示の組み合わせで、ナビ表示やスマホ連携の記載はない。ソフテイルでナビを使うなら、基本的には何かを足すことになる。
問題は、何を足すかだ。
Beeline Moto IIとは何か
Moto IIは、Beeline(ビーライン)のバイク用ナビだ。日本では株式会社プロトが正規輸入元として扱っている。
プロトは初代Motoを「目的地に辿り着くために『必要な情報のみ』を『必要な場所』に表示」する製品として紹介している。Moto IIの説明にも「ミニマムな見た目に使いやすい機能を詰め込んだ『シンプル×スマート』のコンセプトはそのままに」とあり、考え方は2代目にそのまま引き継がれている。機能だけでなく、ハーレーとの調和で物を選ぶ。IRON RIDE TOKYOがこれまでの記事で大事にしてきた考え方と、ここがぴたりと重なる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本体サイズ | 直径53mm × 厚さ20.5mm |
| 重さ | ブラック約40g/メタル系60g |
| 画面 | 1.45インチ(直径36.8mm)IPS液晶、412×412、反射防止・撥水コート |
| 防水 | IP67 |
| バッテリー | 約14時間(USB Type-C充電) |
| 操作 | 本体上面の物理ボタン4つ(グローブのまま操作できる設計) |
| GPS | 本体にはなし(スマホのGPSを使う) |
| カラー | ブラック/シルバー/ガンメタ/ミラーポリッシュ |
| 価格 | 33,880〜41,250円(カラーにより異なる) |
本体にGPSは入っていない。ここは最初に知っておいてほしい。Moto IIはスマホとBluetoothでつながり、スマホのGPSと専用アプリ「Beeline」を使って案内する。スマホは持っていく必要があるが、ハンドルに付ける必要はない。ポケットやバッグに入れておけばいい。ナビ機能そのものは、アプリの無料の範囲で使える。
ブラックがスタンダードで、シルバー、ガンメタ、ミラーポリッシュの3色はアルミ合金ボディのメタル系になる。どの色にも、汎用のストラップマウント(φ16〜50mm対応)が付属する。
ハーレーに付けたときの見た目

後ろから見たハンドル周り。Moto IIはハンドルクランプの左にある小さな円
自分はハンドルクランプのすぐ左に、別売のバーマウントで付けている。上の写真で、どこに付いているかすぐに分かっただろうか。
クランプの右にある黒いアダプターはスマホ用だ。いまはほとんど使っていないが、地図がないと難しい行き先のために残してある。見てのとおり、何も付けていない状態でも、ナビ本体よりこのアダプターの方が目立っている。

同じ縮尺で比べると、本体の面積は約5分の1、画面の面積は約9分の1
同じ縮尺で並べると、差はもっとはっきりする。一般的な6.1インチ級のスマホと比べて、本体の面積は約5分の1、画面の面積は約9分の1。しかもスマホの場合は、ここにホルダーの大きさが加わる。
色は車体に合わせる
カラーはシルバーを選んだ。自分のハーレーは車体の大部分がクローム仕上げなので、ハンドル周りの金属と色をそろえたかった。いまはミラーポリッシュ(鏡面仕上げ)も出ているので、クロームの多い車体なら、そちらの方がさらに一体感が出るはずだ。
逆に、ブラックアウトされた車体ならブラックがいい。存在そのものを消せる。
取付位置とマウント
ハーレーのハンドル径は1インチ(25.4mm)か1-1/4インチ(31.75mm)が一般的で、どちらも別売バーマウント(φ22〜32mm対応、6,000〜7,000円台)の範囲に収まる。付属のストラップマウントもφ16〜50mmに対応しているので、まず付属品で位置を決めてから、バーマウントに替えるのもいい。
位置は、ハンドルクランプの近くがおすすめだ。視線を少し落とすだけで目に入り、ハンドルを切っても大きく動かない。
実際のナビ表示は十分か
画面に出るのは、次に曲がる方向とそこまでの距離、地図ベースのルート、速度、到着予想時刻。制限速度のアラートもある。情報はほぼこれで全部だ。
実際に使っていちばん助かっているのは、交差点までの距離感が分かりやすいことだ。あと何mで曲がるのかが、数字とルートの形で一瞬で分かる。
曲がる地点が近づくと、本体がビープ音で知らせてくれるのもいい。公式の説明では、次の曲がり角の200m手前で1回、50m手前で2回鳴り、LEDも同じタイミングで光る。画面を見続けなくても、音で「そろそろだ」と分かる。
困る場面もある。高速道路の入口で、近くに似た路地があるような分かりにくい場所だと、簡単な経路図だけでは判断できないことがあった。こういう場所はスマホの地図でも迷いやすいが、情報が少ない分、Moto IIの方が不利なのは確かだ。
コンパスモードという選択肢
Moto IIには、ルートを案内せず、目的地の方角だけを示すコンパスモードがある。自分は、道路標識を頼りに目的地へ向かうときにこれを使う。
道は自分で選び、ナビは方角だけを示す。ツーリングの走り方としては、案外これがいちばん気持ちいい。
「情報が少ない」ことは欠点なのか
Moto IIの情報量は、スマホの地図に比べれば圧倒的に少ない。これを欠点と見るかどうかで、この製品の評価は大きく分かれると思う。
自分は、ほとんどの場面で欠点ではないと考えている。ライディング中に見るべきは道路で、ナビに求めるのは「次にどうするか」だけだ。次にどちらへ曲がり、そこまで何mあるか。それが一瞬で読めれば、あとは道路とミラーと標識と周りの車に注意を戻せる。
スマホの地図は、交差点のたびに画面を「読み」に行く必要があった。Moto IIの画面は、読むものではなく確かめるものだ。この違いは大きい。
ただし、情報が少ないことで実際に困る場面はある。それを次に書いておく。
スマホナビの方が向いている人
- 知らない都市部を最短時間で抜けたい人。細かい路地が続く街中では、Googleマップの方が確実だ
- 高速道路の複雑な分岐を、車線の情報まで含めて確かめたい人。Moto IIの簡単な経路図では足りない場面がある
- 走りながら給油所や渋滞を調べたい人。Moto IIにはその機能がない
- 充電の手間を増やしたくない人。Moto IIは本体の充電に加えて、スマホの電池も減っていく
自分もスマホ用のアダプターは外していない。地図がないと難しい行き先に行くときのためだ。どちらかを捨てる必要はなく、行き先で使い分ければいい。
| スマホ+ホルダー | Beeline Moto II | |
|---|---|---|
| ハンドル周りの見た目 | 6インチ級の画面とホルダーが中央に乗る | 直径53mmの円 |
| 情報量 | 多い(地図、車線、周辺施設) | 次の曲がり角、距離、速度など最小限 |
| 視線と注意 | 画面を読みに行く時間が生まれやすい | 一瞬で確かめられる |
| 知らない都市部・複雑な分岐 | 強い | 弱い |
| 給油所などの検索 | できる | できない |
| 振動の影響 | スマホ本体がハンドルの振動を受ける | スマホはポケットの中 |
| 費用 | ホルダー代のみ | 本体33,880〜41,250円+必要ならマウント |
Beeline Moto IIが向いている人
- ハンドル周りのシルエットを崩したくない人
- ツーリングでは、方角と次の曲がり角さえ分かればいい人
- スマホはポケットにしまっておきたい人
- グローブのまま操作したい人
- ナビを「読む」のではなく、「確かめる」だけにしたい人
冬に厚手のグローブをしていても、物理ボタンなら操作に困らない。グローブ選びについては、こちらの記事で書いている。
実際に使って感じた不満
約6,000km使ってきて、もちろん不満もある。
道路情報が足りない
提案されたルートの中に、右左折禁止だったり、一方通行を逆走することになったりと、実際には走れない道が含まれていたことがある。ここは道路データをもっと充実させてほしい。
ルートを外れると、現在地を見失いやすい
提案と違う道に入ったとき、ルートの引き直しの精度がいまひとつだ。一度外れると、自分がどこにいるのか分からなくなることがある。ナビモードの最中も、コンパスと目的地の方角を常に表示できれば、かなり安心できるはずだ。
ガソリンスタンドを表示できない
給油所の位置を画面に出せたら最高だと思う。
スマホの電池が減る
見落としがちなのがスマホ側の電池だ。Moto IIはスマホのGPSとアプリで動くので、走っているあいだスマホの電池も減っていく。自分の場合、200kmを超えるツーリングでは充電器などの対策が必要になる。
海外のレビューでも、複雑な高速道路の分岐でもっと詳しい案内が欲しいこと、給油所の検索がないこと、スマホの電池の減りが早くなることが弱点として挙げられている。自分が感じた不満と、ほぼ重なっている。
ハーレーにはこのくらいがちょうどいい
知らない都市部を最短時間で抜けたいなら、Googleマップの方がいい。高速道路の複雑な分岐を、たくさんの情報と一緒に確かめたい人にも、スマホナビの方が向いている。
でも、ハーレーでツーリングするときに自分が欲しいのは、それではなかった。
欲しかったのは、ハンドル周りの景色を変えず、次にどうするかだけを一瞬で教えてくれて、あとは道路に目を戻させてくれるナビだ。Moto IIは完璧ではない。それでも、その役割はきちんと果たしてくれる。
ナビを見るために走っているわけではない。だから、ハーレーにはこのくらいがちょうどいい。
よくある質問
Q. スマホなしで使える?
A. 使えない。本体にGPSはなく、スマホのGPSと専用アプリ「Beeline」で動く。ただしスマホはハンドルに付ける必要はなく、ポケットやバッグの中で構わない。
Q. アプリは有料?
A. ナビ機能そのものは無料の範囲で使える。
Q. 雨の日でも使える?
A. 防水性能はIP67。雨の中のツーリングでも使える設計になっている。
Q. ハーレーのハンドルに付けられる?
A. 付属の汎用ストラップマウントはφ16〜50mm、別売のバーマウントはφ22〜32mmに対応している。ハーレーで一般的な1インチ(25.4mm)と1-1/4インチ(31.75mm)は、どちらも範囲内だ。
Q. 盗難が心配
A. 本体はマウントから取り外せる。バイクを離れるときは外して持ち歩けばいい。
Q. バッテリーはどのくらいもつ?
A. 本体は約14時間。むしろ気にしたいのはスマホ側で、自分は200kmを超えるツーリングでは充電の用意をしている。


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